2016年10月5日水曜日

「働き方改革」における人事部門の役割

日本の企業におけるいわゆるホワイトカラーの生産性は、OECD加盟国34カ国中21位(2014年実績)にあるようにかなり低いと言える。
このような現状に対して、国の政策として「働き方改革」への取り組み『ニッポン総活躍プラン』が今年6月に閣議決定された。

この「働き方改革」を進める上で、人事部門にとって課題は何か。
まずは経営トップの意識改革ではないだろうか。
多くの経営トップは、過去の高度成長期やバブル時代の成功体験を成功モデルとして無意識に認識しており、例えば「働き方改革」の中でも、特にダイバーシティーの推進や女性活躍の推進について、経営トップは女性の出産・育児やワーク・ライフ・バランスを実感として理解しずらいということが考えられる。

また過去、日本の企業においては従来業務を、業務の順番や手順の見直しを、IT化やアウトソーシングによって「業務改善」を数多く実施してきた。
ともすれば、この活動は定例業務の削減・効率化が主目的であり、今回の女性活躍、ダイバーシティー推進を目的とした「働き方改革」とは異質のものであったと考えられる。「改善」てあり「改革」ではなかったのである。

さて、「働き方改革」の進め方として、実務推進部門として人事部門はどのように取り組めばよいのか。

まずは、女性活躍、ダイバーシティー、ワーク・ライフ・バランスといった「働き方改革」の取り組みテーマについて、その意義を全社員に十分認識・浸透させるということである。
「働き方改革」は従来の「業務改善」の延長でない、これまでの働き方を見直し、新しい働き方を構築するという改革であるという、意識改革、つまり「明確なトップ方針」が求められる。これによって「働き方改革」への共感と自律的な行動を生み出す。

そのためには、人事部門が、古い成長モデルにあった古い働き方が未だ頭にある経営トップに対して、意識のギアチェンジを迫ることができるかが鍵となる。
「そうは言うものの・・・」と、本音を隠しきれない経営トップの意識を洗脳できるかが、人事部門の
役割ではないだろうか。

さらに人事部門は、実行段階においては、「業務改善」のような部門最適の積み上げのレベルでの取り組みでなく、全社的な、部門を超えた全社最適を実現するミッションとして捉え、制度設計のみならず、運用整備にまで踏み込むことが求められる。現場レベルで解決できない高度な課題について、人事部門が共有し、全社レベルで課題解決に取り組む必要がある。制度設計だけに留まってはならない。

余談であるが、閣議決定されたニッポン総活躍プランの中に「実現に向け、我が国の雇用慣行には十分留意しつつ、法改正の準備を進める」とある。しかしながら、従来の成長モデルを支えた雇用慣行に留意して、本質的な「働き方改革」が実現できるのであろうか。

むしろこれまでの雇用慣行に留意しない、新しい発想での取り組みが必要ではないかと考える。

そして、「働き方改革」を実効的に推進していくためには、まずは人事部門としての意識改革と役割認識が問われている。

加藤浩彦